2017年の1年間は「仮想通貨バブル」と言われ、代表的な仮想通貨ビットコインは15倍、仮想通貨リップルに至っては300倍以上の上昇となりました。それに加え、2018年2月に発生したコインチェックの仮想通貨ネムの流出事件は社会問題となり、良くも悪くも仮想通貨への注目が高まっています。
代表的な仮想通貨ビットコインは圧倒的な時価総額を誇り、ビットコイン以外の仮想通貨をビットコインの代わりという意味でアルトコインと呼んでいます。ビットコインキャッシュはアルトコインの一つですが、時価総額は約1.9兆円と第4位(2018年3月22日時点)に位置する、アルトコインの中でも主要な仮想通貨です。
このビットコインキャッシュは2017年8月にビットコインから派生して誕生した仮想通貨ですが、ビットコインの処理能力改善のための色々な経緯があったのち誕生しました。
そこで、ビットコインキャッシュ誕生の経緯を誰でもわかるように、世界一やさしく解説します。
ビットコインキャッシュ誕生の経緯
ビットコインキャッシュの誕生の経緯を語るうえで、派生元のビットコインの歴史を振り返る必要があります。ビットコインは2008年にサトシ・ナカモトが論文発表し、2009年にビットコインの最初のブロックが生成され誕生した仮想通貨です。
ビットコインはP2P(Peer-to-peer)技術を利用したブロックチェーンで取引を記録するという、管理者なしで端末ネットワークによる分散型台帳技術を実現する斬新なものでした。
ブロックチェーンとは取引台帳の1ページに相当する複数の取引情報が書き込まれたブロックを複数の端末に格納し、そのブロックをチェーンで繋ぐように結びつけることで取引台帳全体を管理しています。
ビットコインのブロックチェーンを支えているのは、ビットコインの仕様策定や実装を担う開発者と、ブロックチェーンを維持し正当性の担保を担うことで報酬を得るマイナー(採掘者)と呼ばれる人たちです。
ビットコイン誕生当初は取引処理は問題なく稼働していましたが、利用者が増えるにつれ、徐々に取引処理が遅くなりました。それは、ビットコインのブロックサイズが1Mバイトで10分に1ブロックしか生成できないという制限から来るものです。ビットコインの取引量の増大にブロック生成が追い付かなくなってきたことが理由で、これをスケーラビリティ問題と呼びます。
そこでビットコインの取引処理能力改善の検討がなされましたが、開発者とマイナーの間でなかなか調整がつかず処理能力改善ができませんでした。そのような状況でマイナーが主導し、2017年8月1日にビットコインキャッシュが突然誕生したのです。
誕生の経緯を世界一やさしく解説
もう少し具体的に理解できるように、ビットコインキャッシュがビットコインから分かれて誕生する経緯を、料理店に例えて説明してみましょう。
「ビットコイン屋」開店!人気の繁盛店へ
サトシ・ナカモトという人が今までにない無国籍料理を作りあげ、レシピを無償公開しました。その無国籍料理を広めたいという事で、サトシ・ナカモトを含むレシピ作成者と料理人たちが協力して「ビットコイン屋」を開店しました。
ここで、レシピ作成者はビットコイン開発チームで料理人はマイナーたちの例えです。
ビットコイン屋はレシピの斬新さもあり徐々に客が増え、人気の繁盛店になりました。
「ビットコイン屋」には料理待ちの大行列が
ところが、客が増えるにつれ料理の提供が追い付かなくなり、ビットコイン屋はいつも客の行列ができるようになってしまいました。
なぜならビットコイン屋は調理場と客席が離れていて、出来上がった料理を調理場から客先に配膳するのにトレイを使っていましたがトレイが小さく、トレイで運ぶ料理の数に制限があったのです。
この、トレイで運ぶ料理の数はブロックに格納できる取引データの数と考えてください。
「ビットコイン屋」で行列解消を検討するも改善できず
ビットコイン屋はこの大行列の原因をよくわかっており、レシピ作成者と料理人で改善策を話し合っていました。
「レシピを変えて料理のサイズを小さくすれば、もっと多く運べるぞ」という意見や、「トレイを大きくすれば、簡単に何倍も運べるよ」という改善案がでてきました。
これはブロックに格納する取引データの件数を増やすために、料理のサイズを小さくする=取引データサイズ削減するか、トレイを大きくする=ブロックサイズを拡大するかという改善案です。
このように改善案がいろいろ出てきたにもかかわらず、なかなか改善策が実行されませんでした。なぜなら、ビットコイン屋にはオーナーがおらず、レシピ作成者と料理人の多数決での同意を得て改善策を決める必要があったのです。しかし、レシピ作成者と料理人の間で、言い分や利害が衝突したため、なかなか同意が得られない状況に陥っていました。
そこでレシピ作成者は、「とりあえずレシピを変えて料理のサイズを小さくし、トレイに料理をより多く載せよう」と提案しました。
しかし、料理人は「レシピが変わると、これまで通り料理できない」と反対し、加えて調理器具の製造業者も「これまでの調理道具が使えず新しく道具を作り直さないといけないのでは?」と言い出しました。この調理器具の製造業者は、マイニング用基板の製造業者です。
その間にも客は増え続け、ビットコイン屋の行列はますます長くなっていったのです。
「ビットコイン屋」の行列改善計画合意のはずが、料理人が反乱!
そこでレシピ作成者から「レシピを変えて料理の品数を減らして多く載せるようにし、それからトレイを大きくしよう」と提案し、なんとか合意が得られました。
ところが、「これで決着」と思ったのもつかの間、一部の料理人が「やはりレシピ変更は無理」と言い出して新しくビットコインキャッシュ屋を開店すると言い出しました。
料理人は料理を出した数に比例した歩合給であり、もっと稼ぎたかったのです。なおビットコインキャッシュ屋の独立開店の裏には、調理器具の製造業者も陰で協力したと言われています。
「ビットコイン屋」から独立して「ビットコインキャッシュ屋」が誕生!
こうして、ビットコイン屋は、「レシピを変えて料理の品数を減らして多く載せる」改善を実施しました。
しかし、ビットコインキャッシュ屋はレシピを変えずにトレイをワゴンに替えて新たに独立して開店し、ビットコイン屋とビットコインキャッシュ屋に分かれてしまったのです。
このような経緯の結果、現在ビットコイン屋は相変わらず繁盛店ですが、新しく開店したビットコインキャッシュ屋もビットコイン屋よりも料理が早いぞと、なかなかの人気店になっています。
またビットコインキャッシュ屋は、自分たちがサトシ・ナカモトのオリジナルレシピに忠実だから「本家ビットコイン屋」だと主張しています。自分たちが本家だから、ビットコイン屋ではなくビットキャッシュコイン屋へ来るべきだとも言っているのです。
ビットコインの違い3つ
ビットコインキャッシュとビットコインの主要な相違点があります。ブロックサイズとブロックサイズ圧縮とセキュリティの3つです。
ブロックサイズが8倍
ビットコインでは10分に1度、1Mバイトのブロックを生成しますが、ビットコインキャッシュのブロックサイズは8倍の8Mバイトです。これによりビットコインキャッシュはビットコインに比べ、取引処理が8倍高速化が実現されています。
引データサイズの圧縮なし
ビットコインキャッシュでは取引データサイズを圧縮して、取引データをより多く格納するSegWit(Segregated Witness)技術を実装していません。ビットコインキャッシュではブロックサイズを大きくして取引データをより多く格納しているため取引データサイズの圧縮は行っていません。
ビットコインではSegWitによる取引データサイズ圧縮を採用しており、署名の一部を省略して取引データのサイズを小さくしています。これにより、1つのブロックに格納する取引データの件数が増えるというわけです。
リプレイアタック防御によりセキュリティ向上
ビットコインには、ブロックチェーンが分岐する際の「リプレイアタック」により誤送金が発生するという問題があります。ビットコインキャッシュでは、このリプレイアタックへの防御を実装しセキュリティを向上させているのです。
ビットコインは取引処理件数の増大に伴い、取引処理に時間がかかるという問題がクローズアップされ未だ解決していません。ビットコインの処理時間が問題となればなるほど、ビットコインの代替となる仮想通貨が検討され、ビットコインキャッシュもその有力な代替先となります。
ビットコインキャッシュが「本家ビットコイン」と主張しているのは、ビットコインからビットコインキャッシュへの移行を促す主張なのです。
仮想通貨全体の評価はビットコインキャッシュへも影響する
2018年2月のコインチェックの仮想通貨流出事件は仮想通貨の安全性に疑念を抱かせ、仮想通貨の価格下落を引き起こしました。このように仮想通貨全体の安全性や価値に疑いを与えるような事件や事象が発生すると、ビットコインキャッシュの評価も下落します。
そしてその評価は安全性や価値を保証するような出来事が無いと、回復が難しくなるのです。
仮想通貨への規制
金融庁はコインチェック事件以前は、健全な仮想通貨市場の育成を念頭に対応していましたが、事件以降は厳しいチェックや新たな規制の検討を始めています。一部の外国で行われている仮想通貨の取引規制が日本でも実施されると、ビットコインキャッシュのみならず仮想通貨市場全体へマイナスの影響となります。
まとめ
ビットコインキャッシュはビットコインから派生して誕生した主要な仮想通貨の一つで、ビットコインキャッシュ誕生の経緯を誰でもわかるように、世界一やさしく解説しました。
ビットコインとビットコインキャッシュの違いや誕生の経緯を理解して、仮想通貨や仮想通貨市場理解の一助となれば幸いです。